H27年の田植えの反省について(H27年5月24日記述)

 今年の田植えも半ばを過ぎ、終盤に向かいつつあります。
 4月の前半は雨が多く、後半は晴天が続き、感覚が狂いやすい年だったと思います。
 4月末から5月上旬にかけては、乾燥しやすい条件となり、夕方から強い風が吹くと葉の水分が蒸散し、
植え痛みの原因となりました。
 
  写真 水がなく、葉が丸まってしまった苗(5月1日撮影)
 
  同じほ場の現在の姿(5月24日撮影)
 
  同じ頃に植えられた健全な生育の稲の姿(5月24日撮影)

 活着の善し悪しが、いかに以後の生育への影響が大きいかよくわかります。
 
 提案としては、植え付け後はすぐに水を入れ、減水後は2~3日未湛水状態として土壌を少し干して、入水後除草剤を
入れる順序でどうだろうかと考えています。(←土質、水の確保などを考慮する必要があります。)
 
 今年のもう一つの特徴は、4月の降雨の影響を含めて闇田の多い年と言えます。
 また、田植えの作業が遅れ、苗が老化したことも原因の一つと考えられ、活着が良くないほ場
が多い傾向でした。
 
  写真 葉は良く伸び、そんなに強い風でもないのに垂れている。代かき時に良くこなし、いつまでも深水にするとこうなり
     やすい。(長浜市旧湖北町にて)
  
  写真 一見健全そうに見えるが株元は黒い。根が弱っている。    ↑こちらは株元までほとんど緑色
  注 5月22日撮影 各々田植え時期、品種は不明)

 天気的には早く中干しできる気象条件ですが、植え痛みやその他の人為的なミスで分けつのお遅れが目立っています。
 このため、中干し時期も遅れるところが多いでしょう。(←緩効性肥料などの利用では、倒伏の原因となりますのでご注意ください。)

次年度に向けたチェックをしましょう!
このホームページは、おいしい米を作るためであることを留意することをまず確認して下さい。
このため、妥協のない内容を示しています。
従って、ただの低価格米を目指す都道府県が示すものとは異なります。

★理論を確立して低コスト化と良食味の両立に向けて


 湿気た土壌を観察したときに、このような風景を見たことはありませんか?
 EM菌などを利用すると、このような表情を示すことがあります。
 藻類や細菌の中には、窒素固定するものがあります。
 これらの微生物を活かすと、肥料に変わって稲に窒素を供給します。
 主に5種類の菌があり、地域によって種類が異なるようです。
 よく、タンパク含量が上がりすぎると利用を躊躇される生産者もありますが、よくよく確かめると
従来の施肥設計に追加して利用しているケースがほとんどです。
 また、「効果がなかった」と感想を持たれている方は、多くが方法に誤りが見られます。
 まずは、コツをつかむことが大事。
 内容はこちら → 会員のページ

 
★今年の反省から

 総括して、次の点に注意しましょう。
 ○良食味米を栽培するにおいては、従来の考え方とは異なる知見が増えています。
  米作りのプロである以上、常に新しい知識を持って、栽培方法を変えていくことが必要です。
  良食味米の栽培は、近年、NSCやペオンの研究がすすんでいます。
  これらは両者が適正に理解され、栽培に生かされることが重要となっています。
  佐々木農研では、食味計では点数が高いけど、食べたらおいしくないという米は目指しません。
  また、高価な資材ではなく、現在使われているものよりも安価で効率的な方法を考えていきます。  
  
 ○土つくりについては、養分の補給だけでなく、雑草対策を兼ねて行います。
  稗は、石灰窒素で休眠覚醒することが知られています。
  稗の多かったほ場では、石灰窒素の使用もご検討下さい。
  匍匐型侵入雑草に対しては、非選択性除草剤を使用します。
  環境こだわり農業を実施される場合は、農薬成分数のカウントが収穫~収穫までとなっていますのでご注意下さい。
  環境こだわり農業は、すべてのほ場で実施しなければならないという理由はありません。
  必要に応じて、防除対策のローテーションを実施しましょう。
  
 ○代かき作業について
  除草剤の効果を高めるため、土をこねすぎる傾向があります。代かきは軽く行います。
  体系処理を前提に計画を立て、必要に応じて対策を実施しましょう。
  
 ○栽植密度 
  苗箱の使用数を減らすため、疎植栽培がはやっています。
  V字型稲作で有名な松島省三の名言を用いると、「同じ籾数なら一穂籾数の少ない方が登熟の良い米ができる。」・・・
 つまり、現在の米の品質低下は、疎植栽培と代かきのし過ぎ、ハーフ有機肥料や緩効性肥料の割合が高い肥料の利用
 など、初期の生育が悪くなり、穂数が減る一方で気中炭酸ガス濃度の高まりにより、平米あたりの籾数は増える傾向で、
 一穂籾数の平均が90粒を超えるほ場がでています。
  大きな穂は、よく稔っているように見えますが、実は米は細くおいしい米にはなりません。
  細い米は、相対的にタンパク含有率が高くなる傾向があります。
  もちろん、悪しきタンパクかはこれから調査しますが、食味値の数字を上げることはできません。
  小さい穂で、プリッとした良い米を作りましょう。
  そのためには、初期の生育確保が必要です。
  稲がよく育つときに植え付けることが重要になります。

 ○除草剤散布は水の状態を考えて
  近年、田植え同時除草が増えています。
  この作業状況を見ると、ほとんど水のない状態で散布したり、入水したみずがオーバーフローしたり、漏水したり、また、
 チョロチョロ入水を続けていたり、除草剤の効果を落とす要素が目立っています。
  除草剤を播いたら、①薬が溶けて展開する。②薬を均一に展開させる。③薬をほ場に止める。を考えたとき、何が必要か?
 が理解できるはずです。
  農薬の使用数を減らすためにも、効果的な使用が必要なのです。
  
 ○玄米タンパクが高くなる理由
  本年、葉身窒素含有率が高く、良食味米をめざす場合は、穂肥は入れられないというほ場が結構ありました。
  ところが、ほとんどの生産者は、この水準でありながら、穂肥は入れたがる傾向がありました。
  また、緩効性肥料はタンパクが高くなる傾向があります。
  普通、稲の栽培には、緩効性肥料は不要です。
  必要としてきたのは、収量を上げる→大きな穂をつける。→稔りの遅い部位が増える。→止め葉までしっかり働かせる必
 要がある。→遅くまで肥効を保つ必要がある。→緩効性肥料が理想的となる。
  
  昔から、NSCを高めると玄米のタンパク含有量は減る傾向にあります。
  一方で、葉身に一時蓄えられた窒素は、最終的に玄米に移行します。
  宮城県の試験場では、NSCは穂揃期の葉身窒素濃度が高いと低くなる傾向があります。
  県では、疎植栽培と穂肥分施2+2を進めていますが、これは米の品質を明らかに悪くします。
  もちろん、NSCを高めただけで、食味が上がるわけではありません。
  ここで、ペオンが登場するわけです。
  具体的な方法は、研修会等で紹介します。
 
 ○低コスト化に向けて
  収量を確保するために、例えば1俵多くとるために、経費が多くなっていませんか?
  収量が多くなっても、等級が下がれば一気に増収分は帳消しになります。
  最近は、一袋20kg入りで4000円の肥料は当たり前、5000円のものもあります。
  中にはこれを60kg入れると指導されるところもあります。
  確かに、入れても普通に米はとれるのですが、こんなに使う理由がよくわかりません。
  稲が持ち出す窒素量は、500kgの反収で10aあたりで約5kg程度が理想的なのです。
  これは、栽培方法などで、どんどん増やすことが可能です。
  米の中に窒素を蓄えれば、どんどん施肥量を増やすことができます。経費を多くして、まずい米を作ってはいませんか?
  窒素量だけではありません。肥料にはその他成分も入っているので、これもコストにつながります。
  
  稲が吸収する窒素は、肥料だけからではありません。
  土壌、雨、用水、さらには雑草や藻類、その他動植物も稲に窒素を供給します。
  異論を唱える人も多くいますが、わらの部分を含めても窒素の必要量は約8kgです。
  この内6割は、化成肥料使用時で土壌由来の窒素なので、実質の施用量は3.2kgで良いはずです。
  あとは、肥料の効率を以下に上げるかが課題となります。
  
  有機肥料なら、さらに少なくなります。
  有機肥料は、種類によって効率が全く異なります。
  中には計算値以上の肥効を示すものがあります。
  稲をよく観察すると、自然と施用量が減り、低コスト化につながります。
  もし、肥効が保てないと感じたら、低コストな次の一手を紹介します。
  水稲40haの経営なら、1000円の違いが40万円になります。

 ○病害虫防除について
  いもち病は、QOI耐性菌が出たことで、使用できる農薬や農薬の使い方に変更が求められるようになりました。
  田植時は、ニカメイチュウの防除が有効で、6月上中旬から紋枯病対策、降雨が続くときやいもち病の常発地はこれに
 あわせて穂いもち対策を念頭におきましょう~。
  農薬の使用制限にかかわらず、収量や品質を落とすことのないよう取り組んで下さい。

★今年の栽培の注意点

○本年の収穫・検査の状況
全般的に減収し、県が温暖化対策として推進した疎植栽培のところでは、減収が大きくなっています。
また、青籾がいつまでも稔らない状況となっています。
いもち病については、一部地域で多発しており、地域をあげた管理体制の必要性が再認識されるところです。
いもち病は、胞子が4km程度飛ぶことがあり、発生源を特定することが難しい病気です。
皆が注意し、予防にとりくみましょう。
県では、ストロビルリン系の殺菌剤で問題となるQOI耐性菌が確認されました。
次年度使用する薬剤の選定にもご注意下さい。

紋枯病の発生も多い年でした。

県では、紋枯病より夏の高温が品質低下の原因と主張していますが、実際は紋枯病の発生度合いの方が、
等級の変動に連動していることが多く、5・6月の気温がその年の等級と相関(R=0.393)が見られています。
(※(参考)8月の気温は0.08)

紋枯病は、多犯性で大豆などにも感染し、土着性が高く、今年、発生の多かったほ場では、j次年度作で専
用の薬剤防除をご検討ください。



○収穫・乾燥時の注意点
今年は気温が低く推移しています。
青籾率の変化は、例年より遅く推移しています。
穂の状態をよく見て収獲しましょう。
穂の先端がすでに枯れている場合は、中の米を確認し胴割れの状況を確認します。
うっすら割れている場合は、早めに収獲をしましょう。
また、穂が短い場合、思ったよりも早く登熟しますが、青籾率は少なくてもかまいません。
胴割れの状況を確認し、収獲を始めてください。
紋枯病が多くなっています。発生ほ場では青籾率はあてにはなりませんし、収獲適期が短くなります
のでご注意ください。
乾燥調製については、気温が低くなっていますので、従来と同じ乾燥温度では、高夜温の時よりも減
水分率が大きくなります。
乾燥機の取説書を再度確認し、胴割れに注意しましょう。
籾すり時の穀温に注意し、肌ずれや籾混入に注意しましょう。

○いもち病の対策
今年は穂いもちが多くなっています。
穂いもちは、収穫前に急激に広まることがありますので、発生が見られる場合は注意ください。
発生が多くなる場合、薬剤防除が基本です。
しかし、収獲前日数で薬剤防除ができない場合があります。
当会では、収穫直前までの対応策を紹介させていただいております。

○コシヒカリ・キヌヒカリの刈り遅れに注意しましょう!
 昨年から本格的に推進されている「みずかがみ」の幼穂形成期が5月上旬植えで6月30日頃
 一方コシヒカリは7月1日に確認されています。
 昨年は、極早生のあきたこまちの収穫時期に近づき困られた生産者は多かったのですが、今年は
コシヒカリの収穫期と重なる可能性が出てきました。
 昨年産のコシヒカリは、相対価格で前々年の8位から大幅に落ちており、厳しい状況となっています。
 少し早いみずかがみの収穫のために、コシヒカリ・キヌヒカリの収穫が遅れる事のないように、主力
品種のコシヒカリ・キヌヒカリの適期収穫、品質向上に務めて下さい。 

最近の時事

本年は、いもち病が例年のより多いようです。
7月は一時晴天高温に推移したことで、勢いが低下したようですが、8月に入り降雨の日が多くなっております。
初発に注意し防除に努めるほか、周りへの周知をお願いします。


農薬が使えない場合の対策
○ホタテの貝殻石灰でイモチ防除に自信
参考文献現代農業、(2007.668 青森県の稲作農家。ホタテの貝殻を焼いて微粉末にした有機石灰“ラミカル”を使用。
葉イモチ病が出たら、ラミカルを1反当たり半袋(7.5kg)をミスト機でイネに直接散布。うっすらと白くなる位が目安。穂イ
モチ病が出た時は、ラミカル1袋を
3050ℓの水に溶かし、一昼夜おいてから上澄み液を30倍に薄めて、動噴で散布。
イモチが出てからでも効果があるが、予防のため早めに散布することも有効。カメムシの被害も減った。


○ALM
アルム純EXに保護作用の高い生薬エキスを添加し、単独施用での予防・発症抑制に効果 があります。
山形大学農学部においても稲の重要病害であるイモチ病・紋枯病に対しての抵抗力・拡散抑制には明確な効果が検証
されています。
この商品は有機JAS認定を受けています。

去る6月27日に研修会が開催され、24名の参加がありました。
このときの資料はこちら

7月14日頃から極早生のあきたこまちの出穂が始まりました。
病害虫の状況としては、いもち病、紋枯病が目立ってきました。
常発地は注意しましょう。

7月20日に「みずかがみ」および「キヌヒカリ」の出穂が始まったことを確認しました。
多分、コシヒカリでも出穂を確認できるところがあると思います。
7月21日にコシヒカリの出穂の始まりを確認しました。

生育初期段階の稲の管理
植え付けて間がない状況だが、活着し地肌が見えていても葉が枯れることはない。
5月16日撮影

生育良好、この時期にこの位の生育量は欲しい。
5月15日撮影

同じ時期に移植した苗。生育の悪い原因は?
5月15日撮影                                               原因がすぐわかれば、指導者として合格。
                                                        もちろん、除草剤の影響ではありません。

ところで紛らわしい病み田の症状はこちら。
5月24日撮影                                               前の写真で病み田と判断した者は、指導者失格。

同じところで、24日午後~26日朝まで干して、
5月27日撮影                                               27日に撮影しました。障害が戻っています。


中干しの時期になりました。
中干し時期のの稲の姿です。強勢落水せず自然減水で中干しに入るのならこのくらいからです。ご参考に!

立ち位置から


中央の株で、茎数は10本を確認。ほ場の平均17本・・・・坪あたり50株植え、㎡あたり250本強。
目標の茎数420本として、中干し時期の目標茎数は340本。
あと30%を確保。同心葉の法則から、この時期は1週間で1.36倍になるはずです。
だから、自然減水で中干しに入ってちょうどとなります。
坪70株なら、さらに早い時期から入れます。(6月1日撮影)


幼穂の確認状況

 6月27日 4月下旬上の「ひとめぼれ」で幼穂を確認しました。
        同時点で、5月6日上のみずかがみは0.3mm(滋賀県農業技術振興センター発表より少し遅いです。) 野洲市野田から比留田あたり
 6月30日 27日と同じほ場のみずかがみで1mm確認しました。